WORKS ないシゴト
都市伝説ダウト「証拠より論」

都市伝説ダウト「証拠より論」

担当範囲
企画 / コピーライティング / 制作ディレクション / PR
公開日
2025/11/12

誰でも陰謀論者になりかねない

SNSを中心に、今や無数の陰謀論が当たり前のように流通しています。
アメリカでは、陰謀論を信じたトランプ支持者による議事堂襲撃事件が起きるなど、その影響は社会問題として無視できない規模になっています。

僕自身、もともと都市伝説が好きで「ケネディ暗殺に黒幕がいる」や「明智光秀が江戸幕府を裏で操っていた」などと書かれた本を夢中で読んでいたタイプです。
だからこそ「自分もいつか根拠の薄い陰謀論にハマってしまうのでは?」という危機感がずっとありました。

そこで、“陰謀論に陥らないための方法”を真剣に調べてみることに。
すると、昭和女子大学・榊原准教授らの研究で、「一度立ち止まりよく考える力(熟慮性)」が、陰謀論へのハマり込みを防ぐ重要な要素であるという結果が示されていました。

この「熟慮性」を、もっと楽しく、自然に身につけられる方法はないか。
そう考えたとき「人狼」や「ダウト」など、疑いながら遊ぶボードゲームとの親和性が高そうだと考えました。

根拠があいまいな話を疑いながら聞く。
そして逆に、自分が根拠の薄い話を組み立てて、相手を騙してみる。
その双方を体験することで、“怪しい情報との正しい距離感”を遊びながら学べるのではないか。

そんな仮説から誕生したのが「都市伝説ダウト『証拠より論』」というボードゲームです。

遊び方

プレイヤーは都市伝説テラーとして配られた「都市伝説カード」の内容を披露していきますが、カードの中にはお題が書かれた「ナシ伝説カード」があります。

このカードをもっている場合はお題や、併記された豆知識にそって、その場で都市伝説を自作し披露しなければなりません。テラーはナシ伝説がバレないように話し、聞き手はそれを見破るというのが、基本的な遊び方になります。

またナシ伝説を語っていても、それが実際に存在する都市伝説と重なる可能性があります。その疑いがある場合はネット検索で裏取りを行うことができ、この検索体験そのものが「本当のところはどうなのか」と疑う姿勢を育み、陰謀論への耐性を強化すると考えています。

商品概要

● 商品名:都市伝説ダウト「証拠より論」
● 価格:4,950円(税込)
● 発売日:2025年11月12日
● 内容:都市伝説カード・ナシ伝説カード(60枚)説明書(1枚)
● プレイ時間:約20分
● プレイ人数:4〜6名
● 監修:ムー編集部
● 販売サイト:Amazon

カード内容

都市伝説カード

ゲームのテーマが「都市伝説ダウト」に決まった段階で、都市伝説といえば月刊ムーの存在は欠かせないと考え、まずはwebムー編集長の望月さんに協力をお願いしました。
以前ムー編集長の三上さんが「陰謀論者には絶望が足りない」と語っていた記事も拝見しており、今回のテーマに興味を持っていただけるのではとも思っていました。

ただし、実際にカード化する都市伝説を選ぶ過程は非常に慎重を要しました。あまりに有名すぎる都市伝説は、ゲームの性質上すぐに正解が見抜かれてしまうため採用しづらく、一方で「ラングヴィルという街が突然消えた」など固有名詞が強すぎる都市伝説は、でっちあげの「ナシ伝説」と疑いにくいためゲームとして扱うには難しい題材でした。

そのため、「そこまで有名ではないが、テーマからの連想で議論が組み立てられる」というバランスの都市伝説を中心に、ムー編集部から候補を頂きながら選定を進めました。こちらでも月刊ムーのバックナンバーを読み込みつつ、ゲーム性と都市伝説らしさの両立を意識し、最終的に90個以上の候補からカード用の題材を精査しています。

ナシ伝説カード

都市伝説をでっちあげるための“ナシ伝説カード”は、都市伝説で頻繁に扱われるテーマを参考にしながら、そこから多様な憶測が生まれ、議論が自然と広がるような構造を意識して作っています。
各カードには豆知識を添えていますが、この豆知識が誤っていると企画そのものの信頼性を損なうため、情報の正確さを最も重視しました。

まずChatGPTを用いて大量の豆知識案を生成し、その後、学生アルバイトの多田君に協力してもらい、1つひとつについてネット記事や一次情報の出典を徹底的に確認。各豆知識ごとに根拠となるリンクをすべて追い、情報源として成立しているかを丁寧に検証する作業を行っています。

実際やってみて、ChatGPTのハルシネーション(幻覚)っぷりには驚かされました。
全く根も葉もない情報を平気で入れてくるので、このゲームに一番向いているのは彼でしょう。

皆さんもAIを使う際は「論より証拠」を心がけてください。

プロダクトデザイン

デザインを検討するにあたり、制作パートナーであるCHAHANGさんとまず共有したのは、「未知なるもの」「都市伝説らしさ」を備えつつ、内容が難しいゲームであるため、難解なものを好む層に届くデザインにしたいという方向性でした。

方向性を言語化するのに結構時間がかかったのですが、CHAHANGさんと議論をする中で「クリストファー・ノーラン作品が好きな人に刺さるもの」という方向性が見えました。単なるUMAや心霊などのオカルト感や怖さを出すのではなく、「TENET」 や「インターステラー」などのような複雑さや読み解く楽しさが感じられるものにしようと。

デザインのモチーフは映画『2001年宇宙の旅』のモノリスという石柱状の謎の物体です。
ここから着想を得て、まずパッケージを銀ピカにするという方向が決まり、今回のゲームのテーマとなっている「情報の錯綜」「真偽不明の根拠」「隠された黒幕の存在」といったキーワードをもとにモザイクだらけのデザインになりました。

またボードゲームなのかどうかも分かりづらくするために、タイトルは表面に空押しで入れるだけに止めています。

ちなみにこの青色は「PANTONE Blue 072 C」という色なのですが、偶然にも海外のXアカウントで「レーザービームに耐えられるように設計された色だ」という、非常に怪しい陰謀論が囁かれていた色でもあり、ゲームのテーマとの親和性が妙に高かったことも採用理由の一つでした。

効果検証

前述の「熟慮性」の重要性についての研究をされていた榊原先生たちにコンタクトをとり、監修を打診したところ「面白い!」と言ってくださったものの、「ただこのゲームで効果が出るとは言い切れない」とのこと。そこで実際に効果検証を行い、実際に効果があるかどうか「論より証拠」で確かめることになりました。

大学生36名を対象に、ゲーム実施前後で陰謀論に対する態度や信念の変化を測定する調査を実施し、単に繰り返し回答してもらう「統制群」と比較することで、ゲームがどのような影響を与えるのかを分析。

その結果、本商品によって「陰謀論耐性が高まる」という効果は統計的に確認できず、むしろ一部の指標では、ゲーム後に陰謀論を信じやすくなる傾向が弱いながらも見られました。この現象は、都市伝説ダウトが「ダウト(嘘)を宣言する」というゲーム特性上、提示された都市伝説を“本当ではない前提”で受け取ってしまう可能性がある点が背景にあると考えられます。

つまり、本商品のコンセプトと実際の測定結果との間には矛盾が生まれ、「この商品を遊ぶと陰謀論対策になる」という前提自体が、証拠の乏しい“陰謀論”のような構造になっていたとも言えます。この結果そのものが、タイトルである「証拠より論」が示す通り、情報を鵜呑みにせず慎重に解釈することの重要性を象徴するものになったのではないでしょうか。

詳細な調査結果はこちら

反響

掲載実績

Webメディア
Webムー「「陰謀論」耐性に意外な影響がある! 「ムー」監修ボードゲーム「都市伝説ダウト『証拠より論』」発売
4Gamer.net「ムー編集部が監修したボードゲーム「都市伝説ダウト『証拠より論』」,Amazonで本日発売。都市伝説の内容を語っていくが,なかにはナシ伝説も
電ファミニコゲーマー「ありもしない“都市伝説”を捏造&見破るボードゲーム『証拠より論』が登場。「都市伝説ダウト」として月刊ムーが監修。なお、陰謀論に逆にハマりやすくなる可能性が実験で示唆されてしまう
BROAD「『都市伝説ダウト「証拠より論」』~あの“ムー”監修の都市伝説を検証するトークゲームがAmazonにて販売開始
KAI-YOU「オカルト誌『ムー』監修のボードゲーム発売 “陰謀論”対策用に開発も逆効果に
カゴシマニアックス「鹿児島大学の先生も制作に参加!陰謀論耐性を鍛えるはずが…“逆効果”!? ムー監修ボードゲーム「証拠より論」が色々ヤバそう
AdverTimes.「ムー監修・陰謀論対策ボードゲーム発売 “疑う力”を鍛えるはずが…検証で見えた真実

クレジット

企画・制作:ない株式会社
監修:ムー編集部
デザイン:株式会社CHAHANG
印刷・製造:有限会社修美社
調査研究:大薗博記(鹿児島大学)、榊原良太(昭和女子大学)
制作アシスタント:多田宇輝